2018年7月5日木曜日

主婦会館とのご縁

 この1,2年、月1回、金曜日だけ診療させて頂いてきましたが、この4月から外来回数をぐっと増やして、第1,3,5週の火曜日の夜と金曜日の診療を始めました。

 私は、大学時代に「女は男の0.7人分しか働かない」と言われたのが悔しくて、意地でずっと夜間当直や緊急呼び出しありの、男性と同じ働き方で常勤勤務医をしてきました。産休は取りましたが、育児休業の制度がなかった時代でした。

 一般の方には、産科と婦人科の違いが分かりにくいと思いますが、妊娠・出産が産科で、同じ妊娠でも不妊治療、流産・子宮外妊娠などは婦人科領域になります。婦人科領域は、月経の不調や、子宮・卵巣の病気など、幅広いものです。

 主婦会館クリニックにお世話になったのは、堀口貞夫先生と堀口雅子先生ご夫婦のご縁です。私が駆け出しの研修医の頃から30年以上お世話になってきました。約30年先輩の後ろ姿をずっと追いかけてきた気がします。

 主婦会館クリニックは、もう一人、私にとって大事な先輩がいらっしゃいます。奈良林祥先生です。先生は、お亡くなりになる前年に、私に遺言のような謎の言葉を残されました。それは、「早乙女くん、80代のセックスはね、それはそれはいいものですよ。セックスとは男性が女性に奉仕することなんです」というものでした。当時40代の私は、「はぁ」と間の抜けた返事をするのが精一杯でした。そんな私が、奈良林先生が昭和の時代に診療されていたこのクリニックにいる、そのことだけで歴史を感じ、また先人の歩んだ道をさらに広く歩きやすいものにして後輩につなぎたい、そんな思いでいます。

 このクリニックは不思議なところです。四ツ谷駅徒歩1分、看板もなく外からはわからないクリニックです。「性の相談」は、欧米では珍しくはありませんが、日本ではなかなかニーズが見えない、みえたところで受け皿がない領域です。しかし、セックスレスや性嫌悪、性交痛など、ああ、そういう人もいるよね、という、実はさほど珍しくない診療領域なのです。そんなの相談してどうにかなるの?とお思いの方もいらっしゃるでしょうし、産婦人科は敷居が高いという方もいるでしょう。まずはお気軽に一度ご相談ください。もっと早く来ればよかったという方ばかりです。一般に「性教育」といわれますが、大人向けの性の相談は人生を豊かにする知恵や知識の宝庫です。お伝えしたいこと、お話すべきことは一人一人違うので、外来でゆっくりお話しさせて頂きたいと思っています。

 「主婦」という名称に時代を感じますが、1948年から「主婦連」がおしゃもじを持って「台所の声を政治へ」という消費者目線の活動を始めた、私の年より長いこの伝統は大事にしつつ、名称変更はできないか事務方と相談中です。これからも一人一人の皆様のお役に立てる主婦会館クリニックの一員として精進していきたいと思っています。